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菊姫の酒造り

個性と誇りを捨てた日本酒

日本酒は無味透明なもの?

日本酒は「水のように無色透明なのがあたりまえ」と思っている方は多いと思います。しかし、ビールやワインには「原料由来の色が着いているのがあたりまえ」なのに、なぜ同じ醸造酒である日本酒は別なのでしょうか。

搾ったばかりの日本酒の色は、少々青みがかったきれいな黄色です。酒の中には米から溶け出た旨み成分がたっぷりは入っています。これらの成分は熟成させることでより複雑味を増した味の成分となり、同時に色調も琥珀色めいていきます。この色を取るには「活性炭」、そう、あの真っ黒な炭に吸着させて取り除けばいいのです。活性炭の表面には無数の穴があいており、その大きさに応じて香りや色などの分子を吸着します。これを大量に添加して濾過すれば、色は無色透明…、「きれいになってメデタシメデタシ」というわけにはいきません。

なぜなら、色の分子を吸着しやすい炭は、同時に味に関係する成分も吸着しやすいからです。つまり、色が無色透明になるくらいに活性炭を添加すると、味と香りもすっかり抜けてしまい、旨みのない酒になってしまうのです。これも言いようによっては「淡麗辛口」と表現できないことはありません。

活性炭は日本酒のお化粧

日本酒の活性炭処理は、たとえて言うと女性のお化粧に似ています。素肌が美しければ薄化粧でもキレイにみえますが、逆に厚化粧で隠してしまわなければいけない場合もありますね。お酒の場合も、良質の原料米を使って適切な熟成をした素性の良い酒には、あまり大量の活性炭は必要ありません。対して、質の悪い原料米で造られた雑味が多い酒の場合は、大量の活性炭で処理しないと飲めない、ということです。
菊姫は、醸造と熟成によって得られる酒の旨みのみを大事にしているので、活性炭は必要最小限の量しか用いません。そのため、当社製品には色が残っております。お客様に「なんでこんなに色があるのですか」というお問い合わせをいただくことがありますが、「これは十分に熟成したお酒の旨みを大切にするために、極力薄化粧にとどめているからです」とご説明しています。

菊姫は、日本酒の本来の旨みや香りに加えて、色合いも楽しんでいただけるお酒です。