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菊姫の酒造り

誤解されている日本酒の世界<参>

「純米酒」とは、「吟醸酒」とは

「純米酒」とは精米歩合70%以下の白米と米麹及び水を原料とし、アルコール添加(以下アル添)していない酒で「香味及び色沢が良好なもの」を言います。

造り手の技術や考え方が一番ハッキリ出るので、酒質的にもバラエティーに富んだ製品がそろっています。最近、一部のメーカーから「米だけの酒」なるふれこみの製品が出回っていますが、これらは「融米造り」などと同様で、米のデンプンを無駄なく高度利用することに徹した酒であり、「製造原価を下げて合理化・省力化に貢献する」という意味では画期的な酒造りといえます。ただし、これらの酒には、使用原料は米100%でも「純米酒」という表示の出来ないものもある、ということは知っておいて下さい。
「吟醸酒」とは精米歩合60%以下の白米、米麹及び水、またこれらと醸造アルコールを原料とし、「吟味して醸した清酒」で、「固有の香味及び色沢が良好なもの」と規定されています。ところで、吟醸酒を語るときに「純米吟醸こそが最高の酒で、アル添した吟醸酒は偽物だ」という話を聞くことがありますが、はたしてそうでしょうか。
吟醸酒におけるアル添は、「もろみ中の吟醸香を引き出し、後味のキレを良くする」ことを主な目的としています。そして、このアル添のタイミングやその量を決定することが、吟醸酒づくりの重要なポイントの一つとなっています。ここでの判断を誤ると、それまでの苦労が水の泡になってしまうことさえあります。菊姫は純米酒では芳醇で豊かな味を追求し、吟醸酒は上品な吟味(ぎんあじ)を重視しています。この2つは酒質的に相入れない点があるので、菊姫では純米吟醸を造ることは考えていません。

自分好みの酒に巡り合うために

では、これらの表示がある酒なら、必ず良い酒・おいしい酒といえるのでしょうか。

たとえば、吟醸酒で「吟味して醸した清酒」という表現がありましが、現実には酒質に対して具体的な検査や規制があるわけではなく、もっぱらメーカーの良心に任されている、としか言えない状態です。精米歩合にしても、精米技術や使用する原料米の質を論ぜずに、どれだけ削ったかだけを比較しても無意味です。繰り返しになりますが、結局のところ、清酒の品質は清酒自体の香味によってのみ表現が可能であり、より良い酒質を得るための努力と姿勢だけが、その裏付けに成り得るのではないでしょうか。
お酒はあくまでも嗜好品です。表示や数値に惑わされず、是非ご自分の舌で好みに合ったお酒を選んで下さい。貴方のお口に合う日本酒と巡り合えることをお祈りいたします。