08/19
柳社長コラム 「酵母が紡ぎ出す日本酒の香り」
ご存知の通り、日本酒は米から造られるお酒です。
原料となる米は穀物ですので、あまり香りはありませんが、
お酒に独特の香りがあるのは、ご存知かと思います。
この香りは、主に酵母が発酵の過程で造り出すもので、
特に低温でじっくり醗酵させた吟醸酒には多く含まれます。
吟醸造りでは、栄養分の少ない突きハゼ型の麹を造り、
低温に保ったままゆっくり醗酵させることで、
酵母を一種の飢餓状態に保ちます。
酵母は仕方なく、イソアミルアルコールなどの高級アルコールを造ります。
こうして造られたアルコールと、もろみ中の有機酸が結びつくことで、
「酢酸イソアミル」などの香り成分(エステル)が生成されるのです。
例) イソアミルアルコール + 酢酸 → 酢酸イソアミル
ところで最近、吟醸酒以外でも香りの高い酒が増えてきました。
昔はそんなに香りの高い酒は多くなかったのですが、
なぜだと思いますか。
その答えは、「香りを良く出す酵母が創り出されたから」です。
人工的に突然変異を起こさせることで、吟醸造りなどをしなくても、
香りを従来のものより数倍多く出す酵母が創り出されたのです(※参照)。
伝統的な吟醸造りでは、酵母を生かさず殺さず、
きりぎりのところで如何に香りと味を調えていくかが勝負です。
今は、香りが良く出る酵母さえ手に入れば、
誰でもそれっぽい酒を造ることが出来るようになりました。
派手で華やかな香りがあるお酒は、
わかりやすく受け入れられやすいのかもしれませんが…
これになんとなく違和感を感じるのは、私が古い人間だからでしょうか?
また、こういう酒は若いうちにフレッシュさを楽しむもので、
熟成させても良くはならないと感じています。
熟成を重視する菊姫の酒造りには合わないので、
今後も使うつもりはありません。
菊姫では、今でも不器用に昔ながらの吟醸造りを守り、
香味のバランスがとれた「呑んで楽しめる吟醸酒」を造り続けています。
それは、これからも変えないつもりです。
※ 香気成分高生産性酵母について
「セルレニン」という抗生物質があると、普通の酵母は生きていけません。
ところが、人工的に突然変異を起こさせることで、このセルレニンに
耐性がある酵母を創ると、「カプロン酸エチル」という華やかな香りの成分を
通常の酵母より数倍多く出すことがわかりました。
この技術はある酒造メーカーで開発されたものですが、
現在は広く用いられています。
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